まず断っておかなければならないのは、日本の応用言語学や第二言語習得において語られる第二言語ライティング研究というのは、おおよそ言語自体に特化した研究が多いということです。この動向は特に根強いものであり、そもそもライティングとは何か、何を教えるべきなのかという議論から離れがちです。具体的には、以下の傾向が強いと私は感じます:
(a) 第二言語、特に英語で書く学習者の、書記言語(文レベル)の習得・発達・変遷。
(b) 第二言語、特に英語で書く学習者の、修辞構造(文体)の習得・発達・変遷。
(c) 日本人の母語と第二言語における修辞構造の比較分析。
(d) 上記と、書き手の行動・認知構造との関係の理論化・検証。
こうした動向に物足りないと思われる方は、以下の出版物を読むことをお勧めします。以下の出版物は、ライティング教育全般について取り扱っているもので、母語でのライティング教育をどうするべきか等について書かれています。米国ではWriting, Rheotircs(修辞学), Composition(作文法)という研究分野を扱う大学院の授業でも特に重要視されており、ゆえにライティング研究者の必読の書となっています。
注1:ここでいう「作文」とは、日本の初等教育・中等教育において語られる作文、すなわち生活綴方の流れを受け継いだ自己表現に特化したものではありません。日本の文脈では、アカデミックライティング等の読者中心の書き方といってもいいかもしれません。米国では修辞学・作文法研究をRhetComp(レットコンプ)と略して呼称しています。
・Cross-talk in Comp Theory (http://goo.gl/1wge5z)
とにかくこれを読まねば始まらない。米国での作文法研究をまとめた事典のような本。これ読まずして、「ライティング教育やってます」とは語れないレベルの本。知らなければモグリの可能性大。
・Keywords in composition studies (http://goo.gl/xyZT77)
ライティングに関係する用語を取り上げ、それぞれの用語が歴史的にどのように語られてきたかを記述している。この本で取り上げられている議論を知らなくても、モグリの可能性大。
・Situating Composition: Composition studies and the politics of location (http://goo.gl/DZiDOo)
・Post-process theory: Beyond the writing-process paradigm (http://goo.gl/Qk2fpY)
ライティングや作文法研究では、幾度かのパラダイムシフトが起こっていますが、その流れを含んだ研究の歴史を記述しています。また、作文法研究の政治性(力学的関係性)などにも触れています。
今後は米国の大学1年生レベルの作文法の授業、通称FYC(First Year Composition)で扱われる教科書等を取り上げていこうとおもいます。
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