以下はOn Second Language Writing (Silva and Matsuda 2001)に収録された"Notes Toward a Theory of Second Language Writing"(W.Grabe)をまとめたものです。
記憶の整理のために載せます。
Grabe(2001)を読む
この論文はL2ライティングの理論の必要性と、それまでに発表された理論に関する論文の系譜を綴ったものです。ライティングの理論の目指すべき形、過去のライティングのL1/L2理論の系譜、ライティングのモデルの系譜、目的・プロセス・成果に関するライティングの構造、ライティングの理論を構築しうる新たな代案の5つの章で構成されています。
ライティング理論の目指すべき形
Grabeさんは、ライティングの理論を構築することは、広く周知されているcontexts(文献)から読み取れる実際のライティングプロセスの分析から研究者や教師を遠ざけてしまう可能性があり、加えてつかみどころのない一般概念や混乱に引き込んでしまう可能性もあると述べます。しかしながら、理論(つまりどのようにライティングを定義し、理解し、分析し、発展させるべきか)を追求することによってL1とL2ライティング双方における研究、指導、評価の慣習を有効に編成する大要を構築することができると述べます。また、体系的な理論がなければ、研究や指導は個人的志向、社会的慣習、アイデアの再発想の歴史的蓄積にしかならないとも述べています。
理論を構築する上での目標として、Grabeさんは次のような順序立てをします。(以下筆者による図)
この目標を述べた上で、Grabeさんはこれまでどのような研究が行われてきたかを述べます。
まずライティング理論の基礎的な研究としてBereiter and Scardamalia(1987)を挙げます。この研究は知識をそのまま書き出すknowledge tellingと文脈や読み手、文化やwritingの意図といった要因を統合し書き出すknowledge transformingに大別しライティングのモデル構築を行ったものです。しかしながら、たとえこのモデルが様々な予測を生み出すとしても、この研究の範囲では様々な状況下やタスク下に置かれた個人と集団のパフォーマンスの違いに説得力のある具体的な予測が立てられないと述べます。そして現時点(2001)では、より生産的調査、分析、指導へと導く理論が後世で出てくることを願うことしかできず、この生産的調査、分析、指導へと導く理論こそが、descriptive theoryからexplanatory theoryへと発展させると述べます。
さて、この理論を構築する上で重要になってくるのはどういったことを調査するかです。Grabeさんは、その調査対象を簡単な言葉で述べます。
To simply put, the goal is to describe what writing is; how it is carried on as a set of mental processes; how it varies (both cognitively and functionally) across tasks, settings, groups, cultures, and so forth; how it is learned (and why it is not learned); and how it leads to individual differences in performance.
そしてこれを発展させ、具体的にどういった分野を開拓していくべきかを述べます。
1. A theory of language.
2. A theory of conceptual knowledge and mental representation.
3. A theory of language processing (writing process).
4. A theory of motivation and affective variables.
5. A theory of social context influences.
6. A theory of learning.
結果を述べてしまいますと、L2ライティングのモデルはこの論文が書かれた年から10年経った今でも確立されていません。
不完全ながらも体系的なモデルが二つあります。それはFlower and Hyes (1981)のモデルを拡張させたHayes(1996)とGrabe and Kaplan(1996)です。双方のモデルは、結果として似たような形になりました。が、不完全なことには変わりありません。
Grabeさんはこれに対し、新しい代案として予測できないものを無理に予測するのはやめて、かえって将来のよりよりモデル構築のために情報を蓄積し分類していくことを勧めます。
The goal would be to create a taxonomy of research on various aspects of writing performance.-A taxonomic effort provides for more comprehensive coverage and allows for contradictions to exist together until further research resolves these issues. A conditions view also allows for certain constraining factors to emerge across a range of collected studies: It offers a way of noticing less obvious trends and patterns.
またGrabeさんは第二言語習得においてSpolsky(1989)が述べたことを引用し、writingの研究にも同じことが言えると言います。
“My goal…will not be to establish a model of how language is learned, but rather to explore how to specify, as exactly as possible, the conditions under which learning takes place.”
論文の最後では、具体的な分類のカテゴリーを示唆しますが、ご興味のある方は本論文をお読みください。
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